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犬のフィラリア予防

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犬のフィラリア予防は、愛犬の健康を守るうえで非常に重要な課題です。フィラリア症は、蚊を介して感染する寄生虫疾患で、適切な予防措置を取らなければ、犬の命に関わる深刻な病気へと発展する可能性があります。本コラムでは、フィラリア症の概要、予防の重要性、そして効果的な予防法について詳しく解説していきます。

まず、フィラリア症とは何かを理解することから始めましょう。フィラリア症は、犬糸状虫(学名:Dirofilaria immitis)という寄生虫が引き起こす疾患です。この寄生虫は、感染した蚊に刺されることで犬の体内に侵入し、主に心臓や肺動脈に寄生します。成虫に成長したフィラリアは、長さ15~30センチにもなり、犬の心臓や肺に重大なダメージを与えます。

フィラリア症の症状は、感染初期には現れにくいのが特徴です。しかし、時間が経つにつれて、咳、運動不耐性、食欲不振、体重減少などの症状が現れ始めます。重症化すると、呼吸困難、腹水、うっ血性心不全などの深刻な状態に陥り、最悪の場合、死に至ることもあります。このため、症状が現れてからでは手遅れになる可能性が高く、予防が極めて重要となります。

フィラリア予防の基本は、定期的な予防薬の投与です。現在、様々な種類の予防薬が市販されており、主に以下の3つの形態があります:

1. 経口薬:錠剤やチュアブルタイプの薬で、月に1回の投与が一般的です。
2. スポットオン剤:犬の背中に滴下する液体タイプの薬で、こちらも月1回の投与が多いです。
3. 注射薬:獣医師により半年に1回または1年に1回投与される薬です。

これらの予防薬は、いずれもフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を駆除する効果があります。定期的に投与することで、成虫に成長する前にフィラリアを排除し、感染を防ぐことができます。ただし、既に成虫が寄生している場合は効果がないため、予防を始める前に必ずフィラリア検査を受けることが重要です。

予防薬の選択は、獣医師と相談のうえで行うことをおすすめします。犬の体重、年齢、健康状態、生活環境などを考慮して、最適な予防薬を選ぶ必要があります。また、一部の予防薬には他の寄生虫(ノミ、ダニなど)に対する効果もあるため、総合的な寄生虫対策として利用できる場合もあります。

予防薬の中でも近年注目を集めているのが、ネクスガードスペクトラです。この薬は、フィラリア予防に加えて、ノミ、マダニ、回虫、鉤虫などの駆除効果も持つ総合的な寄生虫予防薬です。しかし、どの薬にも副作用のリスクはあります。ネクスガードスペクトラの死亡リスクについては、この記事で詳しく解説されていますので、使用を検討されている方は参考にしてください。

フィラリア予防において、薬の定期投与と並んで重要なのが、環境対策です。フィラリアは蚊を介して感染するため、蚊の発生を抑えることも効果的な予防策となります。具体的には以下のような対策が挙げられます:

1. 犬舎や庭の水たまりをなくす
2. 犬の周辺に蚊取り線香や防虫スプレーを使用する
3. 蚊の活動が活発な夕方から朝にかけては、できるだけ犬を室内で過ごさせる
4. 犬用の虫よけスプレーやグッズを活用する

これらの環境対策は、フィラリア予防だけでなく、蚊が媒介する他の感染症予防にも役立ちます。また、飼い主自身の蚊対策にもなるため、一石二鳥の効果があると言えるでしょう。

フィラリア予防を確実に行うためには、年1回のフィラリア検査も欠かせません。これは通常、血液検査で行われ、成虫が産み出すミクロフィラリアや成虫の抗原を検出します。たとえ予防薬を定期的に投与していても、何らかの理由で感染してしまう可能性はゼロではありません。年1回の検査を行うことで、万が一の感染を早期に発見し、適切な治療を開始することができます。

フィラリア症の治療は、予防に比べてはるかに困難で、リスクも高くなります。成虫の駆除には強い薬を使用するため、犬の体に大きな負担がかかります。また、死んだ虫体が血管を塞ぐリスクもあるため、治療中は厳重な管理が必要となり、費用も高額になります。このような理由から、「予防に勝る治療なし」という言葉が、フィラリア症には特によく当てはまるのです。

フィラリア予防のタイミングについても触れておきましょう。一般的に、フィラリア予防は蚊の活動が活発になる春から秋にかけて行うことが推奨されています。しかし、近年の気候変動により、蚊の活動時期が延長傾向にあることや、室内飼いの犬が増えていることなどを考慮すると、年間を通じての予防が望ましいとされています。

また、子犬のフィラリア予防については特別な注意が必要です。子犬は生後2ヶ月頃からフィラリアに感染する可能性があるため、それまでに予防を開始することが重要です。ただし、薬の種類によっては使用可能な月齢が異なるため、獣医師に相談のうえ、適切な予防プランを立てる必要があります。

フィラリア予防において、飼い主の正しい知識と継続的な取り組みが不可欠です。予防薬の投与を忘れたり、適切な間隔で投与しなかったりすると、その効果は大きく低下してしまいます。カレンダーにメモを書いたり、スマートフォンのリマインダー機能を使ったりするなど、確実に予防薬を投与できるような工夫をすることが大切です。

さらに、フィラリア予防は犬の一生涯にわたって継続する必要があります。年齢を重ねた犬や、持病のある犬の場合、予防薬の種類や投与量を調整する必要が出てくる可能性もあります。定期的に獣医師に相談し、犬の状態に合わせた最適な予防プランを維持していくことが重要です。

最後に、フィラリア予防は個々の犬を守るだけでなく、地域全体のフィラリア感染リスクを下げることにもつながります。感染した犬が存在すると、その犬から他の犬へとフィラリアが広がっていく可能性があるからです。つまり、自分の犬のフィラリア予防を確実に行うことは、社会的な責任でもあると言えるでしょう。

フィラリア予防は、愛犬の健康を守るための重要な取り組みです。適切な予防薬の選択と定期的な投与、環境対策、そして年1回の検査を組み合わせることで、効果的な予防が可能となります。犬との幸せな時間を長く過ごすためにも、フィラリア予防を疎かにせず、愛情を持って取り組んでいきましょう。獣医師とも密に連携を取りながら、愛犬に最適な予防プランを実践していくことが、飼い主としての大切な役割なのです。